浮遊する


まず視界がぼやける。ものとものの輪郭が滲んでぐにゃっとして、水分の少ないこってりした絵の具を筆でぐるぐるかき回されたみたいに視界の色が混濁する。つぎに寒いのに汗が出る。なのに頭とか顔とかはぶわっと突然発熱する。それで、肩から上が上からクレーンみたいなものでふわっと取り外されるみたいな感覚になる。ここでおかしいと気付いて自分の手をみる。自分の手なのに人の手のようなものに思えて、それが目の前で力なく転がってる。気持ちが悪くなる。机、椅子、床、壁、まわりのひと、全てが平面の世界になったように感じる。そして自分の声が聞こえるんだけど、人の声みたいに感じる。自分だけが平面の世界で縦横奥行きの形を持つことが異質だと感じてさらに気持ち悪くなる。なんでここにいるのかわからなくなる。ここっていうのは例えば、学校だったら、なぜわたしは学校にいるの?ではなくて、なんでここに形があるの?という感覚。自分が形を成していることが怖くなっていく。でも最後の理性みたいなところで自分に暗示をかける。「これは現実、大丈夫、大丈夫、大丈夫」かけつづけたところで、パッと視界がいつもどおりに戻る。まだ少し感覚が鈍っているけどゆっくり瞬きをして現実だと理解をする。掌を握っては開いてを繰り返して、血の通ってる自分のものだと理解する。感覚を取り戻して、またふつうに過ごす。この間、1分経ってないくらい。


中学生のころくらいから、しんどくなるとこういうことがあるんですが、久々にあったので忘れないように書き残しておく。症状を調べたら名前が付いているものが出てきた。わたしが知らないだけで世の中のものには大体名前がついてることを知る。そしてこれを体験している人がいるんだと安心した反面、少しだけつまんないなと思っちゃう自分がいる。